~黄金人に聴く~ 涌谷町産「金のいぶき玄米」生産者:及川さん

今回お話を伺った黄金人はJA新みやぎ涌谷稲作生産部会 部会長であり、涌谷町産「金のいぶき玄米」の生産者でもある及川さんです。「金のいぶき(玄米食専用の品種)」の日本初の産金地・涌谷町としてのブランド化への想いやこだわり、そして東大寺への金のいぶき玄米献納の背景に至るまでの詳細を伺いました。
ブランド化の背景
「もともと宮城県が『金のいぶき』という品種を開発したのですが、銘柄に『金』という言葉が持つことで涌谷町の歴史との深い縁を感じつつ、一般的な玄米に比べて3倍以上の大きさの胚芽に栄養素が豊富に含まれているという付加価値がある特別な品種であることから、涌谷町ならではのブランドとして作付けを強化してきました」と及川さん。
生産の大変さ
「金のいぶき」の生産は決して簡単ではないと言います。「金のいぶき」は他の品種と比べて天候に非常に敏感で、収穫量にも大きく影響を及ぼします。それに対応するため、涌谷町の稲作部会では、宮城県や涌谷町、農協とで一丸となり、生産者向けの詳細なマニュアルの作成や、新たに「金のいぶき」の栽培に取り組み始めた生産者に指導を実施。「特に今年の夏は暑すぎて、多くの困難に直面しました」と振り返る及川さん。
安全安心な供給方法と特別な食感の両立
玄米食特有の隠れた課題解決にも、先進の加工技術で取り組んでいます。「涌谷町産『金のいぶき』は、高温スチーム処理という技法を導入しており、玄米の表面を覆う「果皮」の部分に付いている目には見えないカビや虫の卵などを殺菌・殺卵しています。また、高温スチーム処理によって、胚芽のプチっとはじけるような食感に加えて、モチモチとした食感と甘みが増していると好評です」と、誇らしげに語る及川さんの言葉からは、生産者としての情熱と責任感が感じられます。
また、「『金のいぶき』は3倍の大きさの胚芽から効率的に給水するためつけ置きが不要で、白米と同様の水加減で炊けます。忙しい毎日を過ごしながらも健康を意識する方、またすでに玄米を愛食している方には特におすすめです」とのこと。実際、涌谷町内の学校給食や行事でも使用され、子どもたちからも好評だそう。また、その甘みとモチモチとした食感は、スープカレーやリゾットとの相性もピッタリだとか。
涌谷町と東大寺のつながり
また、涌谷町と東大寺との歴史的な繋がりにも触れられました。涌谷町は日本初の産金地として知られており、その金が東大寺の大仏建立に使われたことから、深い関係があると言います。「この特別な繋がりを持つ涌谷町として、平成29年の秋から毎年、『金のいぶき』の新米を涌谷町の現代の金として東大寺の大仏殿に献納しています。また、令和元年からは涌谷町立箟岳白山小学校の児童の皆さんに、地域の産業を知りつつ、日本初産金の歴史・文化を学ぶ機会として、学習田で私たちと一緒に栽培に取り組んでいます」と、歴史の重みを感じさせる及川さん。
「金のいぶき玄米」には涌谷町の歴史、生産者の情熱、そしてその品質へのこだわりが詰まっています。そんな特別な玄米を、ぜひ一度ご堪能ください。
”黄金人”とは
日本で初めて黄金を産出した涌谷町。そんな涌谷を拠点に活躍する生産者の方々を「黄金人(おうごんびと)」と呼び、ものづくりにかける想いを聞かせてもらます。